トップ > RI検査問題 > RI検査問題に関する調査委員会 > 会議の概要2(平成25年7月15日)

RI検査問題に関する調査委員会 会議の概要2(平成25年7月15日)

平成25年7月15日「第2回委員会」会議の概要のPDF版はこちらPDFファイル(190KB)


RI検査問題に関する調査委員会

第2回委員会 会議の概要

 

日  時 : 平成25年7月15日(月)
午後2時~4時
会  場 : 市立甲府病院 第一会議室

 

出席者
委  員、5名
職  員、10名

1  開会及び資料確認

2 副委員長あいさつ
私は、医療従事者ではなく、主に、航空や原子力などのシステムにおけるヒューマンエラーの問題を追及してきたので、今回もその観点から検証したい。
事故分析の最大の目的は再発防止なので、そこに焦点をあてながら議論ができたら良いと思っている。

3 委員長あいさつ
この事例を振り返って考えると、この出来事は単に医療過誤、「誰かがどこかでミスをして、過剰投与が起こってしまった」という話ではなく、技師が良かれと思って、周りから指摘を受けても彼なりの強い使命感を持って、この行為をやり続けていたので、ある意味、倫理の問題があるのだろうという気がする。
そのように、多分に倫理的要素を含んでいる問題に対して、誰がどのように、あるいは組織がどのようにサポートしていけば、再発を抑制できるのかということが非常に重要な要素だと思っている。
いろいろな事情があって、医師が本来なら整理すべきところを技師に大きな裁量が委ねられるような環境を生んでいて、何故、技師が良かれと思って長きに亘ってこのようなことを行ってきたのか、今後、検証していかなければならない。
まず、本来どういう業務をすべきであって、この病院ではどうなっていたのかということを、実経緯をもう少し明らかにして、それを共有した上で議論を進めることが重要だと思う。

4 議事
(1)事態発覚までのRI検査における検査手順について

中央放射線室技師長から、事態発覚までのRI検査における検査手順について、次の内容を説明した。

① 検査の流れ
・ まず、患者に核医学検査が必要な場合は、依頼医より電話でRI検査室に予約の電話が入る。
・ 検査日は未定でオーダー入力し、技師が日程の調整等の調整を行い、検査日を決定する。
・ 依頼医は、検査内容を患者や家族に説明する。
・ 予約検査の前日に放射線技師が電話で、メーカーに放射性医薬品を発注する。
・ 予約検査日に、ルート確保(静脈内に針やチューブを留置して輸液路を確保する処置)が必要な場合には、病棟にその旨を連絡する。
(外来の場合は、小児科の外来、中央処置室で患者のルート確保をする。)
・ 放射線技師がRI検査室において、放射性医薬品を準備する。
・ 放射線科医は、RI検査室で検査名、検査内容、放射性医薬品名のチェックをし、放射性医薬品を投与する。
・ 眠らせる必要がない場合は、そのまま検査に入る。
・ 眠らせる必要がある場合には、小児科の外来か入院病棟にて検査30分前に眠らせてから検査を行う。

② 放射性医薬品の準備の流れ
(テクネチウム99m(放射性物質、半減期6時間)を使用する場合)
・ コレクティングバイアル(ジェネレータから放射性医薬品を抽出するためのガラス製容器)を鉛シールド(鉛で放射線を遮蔽する容器)に入れ、ジェネレータ(放射性物質を分離溶出する装置)にセットし、テクネチウムを溶出する。
・ ジェネレータからテクネチウムを抽出したコレクティングバイアルから、シールドを装着したシリンジAにテクネチウムを必要量、抽出する。
・ シールドからシリンジA(注射器)を取り出しキュリーメータ(放射線量を測定する装置)で放射能量を測定し、放射能量を確認する。(従前は、投与量を記録に残していなかった。)
・ 検査目的に合った標識製剤キットバイアルにシリンジAのテクネチウムを混入する。
・1分以上、攪拌し、再度、必要量の標識化合物を別のシールドを装着したシリンジBに吸い出す。
・ シールドからシリンジBを取り出し、再度、キュリーメータで測定し、放射能量を確認し、シールドに戻す。
・ この時の放射能量が、投与量になる。
・ シリンジBに放射性医薬品名のわかるシールを貼付するか、油性ペンでシリンジに記入し、トレイに入れ、患者に投与するまで準備室で保管する。
委員からは、ジェネレータから抽出したテクネチウムを一般的には希釈するが、当院では希釈していなかったことの指摘があり、その理由を確認することとなった。
また、この希釈していなかったことを除けば、一般的な病院で行っている手順とほぼ同じだという意見もあった。

(2)「市立甲府病院の放射性医薬品過剰投与事件に関する統一要求書」について
事務局より、統一要求書について、
・ 6月24日に「過剰投与内部被曝被害者の会」から市長に要求書が提出されたこと。
・ 市長からは、「今後、内容を充分精査し、会の皆さんのお気持ちを汲み取って誠実に対応してまいりたい」と伝えたこと。
・ 被害者の会では、この要求書の内容を今後、甲府市や病院と協議をする中で基本合意書を締結する意向であること。
を伝えるとともに、要求書の内容について説明した。
委員会では、統一要求書の第二の「真相究明と再発防止を」の1「調査及び調査結果の公表」と2「再発防止策の作成及び公表」の2点が委員会の役割であることを確認した。

(3)第1回委員会において分担した事項の具体的検証方法について

① 法的根拠に関する検証について
委員より、法的根拠検討資料を基に、事態の背景となった核医学検査の流れと、その後の再発防止で作られた手順がどのような法的根拠によるのか、また法的な観点からの疑問点について次の説明があった。
・ 放射性医薬品の発注と納品に関して、技師が製薬会社に対して発注していたということの関係法令は、薬事法49条、医療法6条の10、同施行規則がある。
・ 平成18年に医療法が改正されて、
イ 医薬品の使用に係る安全な管理のための責任者の配置
ロ 従業者に対する医薬品の安全使用のための研修の実施
ハ 医薬品の安全使用のための業務に関する手順書の作成及び当該手順書に基づく業務の実施
ニ 医薬品の安全管理のために必要となる情報の収集その他の医薬品の安全使用を目的とした改善のための方策の実施
が規定されたが、市立甲府病院では、医療法の改正を意識したような放射性医薬品の管理と投与について見直しがあったのか。
・ 放射性医薬品の準備を薬剤師がしている病院と、放射線技師がしている病院があるが、そのことについては、法的根拠がどこにあるのか。
・ 診療放射線技師法第2条2項で、この法律で「診療放射線技師」とは、医師又は歯科医師の指示の下に、放射線を人体に対して照射(撮影を含み、照射機器又は放射性同位元素(その化合物及び放射性同位元素又はその化合物の含有物を含む。)を人体内に挿入して行うものを除く。以下同じ。)ということなので、この人体内に挿入するというところが、まさに医師ないし看護師が行わなければならない。
・ 診療放射線技師法第26条では、「診療放射線技師は医師又は歯科医師の具体的な指示を受けなければ、放射線を人体に対して照射してはならない」とあるが、この「指示」というのがどこまでを指すのか、医師のすべきことと放射線技師のすべきことがどのように区別されていたのか。
・検査の手順では、「放射性医薬品の種類の決定は検査依頼医によって指示された検査種類でほぼ自動的に決定される」とあるが、この「自動的に決定する」ことが医師の指示とどう関わっていたのか、検査種類と医薬品を指示すれば、投与量は決まっているという流れだったのか、そうだとすると、放射線技師の関与する部分はないことになるが、「自動的に決定する」というのがどのような意味か。
・ 放射性医薬品の投与に関して、「投与の内容・患者の状態変化等に関する記録は残していない」とあるが、関与していた医者や看護師は、この検査に関してどれだけの知識を持っていたかということを確認しておくことが、今後の類似の事例を防ぐ上でも必要ではないのか。
・ 現在の検査では、ダブルチェックとか、薬剤師が関与し、使用量を記録に残し、放射線技師、放射線部長、医師も関わっていて、徹底したダブルチェックがされている。
・ 放射線部門システムとは、どのようなもので改善点はないのか。
・ 検査に関する医師の説明が、従前とどう変わったのか。
委員からは、次の意見があった。
・ 医師が検査を指示した時に、投与量等に関して技師の裁量はどこまであるのか。
・ 技師長補佐のマニュアル(覚書)によって投与量が決められていたが、これは技師の裁量の範囲なのか。
・ マニュアルは医師の主導の下で作成されるべきではないか。
・ 物理的線量の決定権は、医師が撮影をすれば医師にあり、技師が撮影をすれば技師にあるのではないか。
・ 医師の依頼に対して、専門的なトレーニングを積んでいる技師には、一定の裁量を認められると判断できるのではないか。
・ 核医学の検査も胸部の単純X線撮影も線量を規定して依頼するものではないが、体重何キロの小児の検査ということで依頼すれば、自動的に技師のサイドで線量は下がる。
・ 医師が、投与量等に関してのマニュアルや技師個々人のノウハウについて責任を負うべきではないか。
・ ジェネレータを使うような病院には、エキスパートの核医学の医師や、技師がいるので投与量はカルテ記載があるのが普通ではないか。

② 医師の指示出しから投与・検査までの通常の手順
医師の指示出しから投与・検査までの通常の手順について、委員から次の説明があった。
・ 検査依頼では、依頼医は検査の項目に基づく、診断名や依頼目的を書いたオーダーを放射線科の核医学部門に出す。
・ 検査予約取得時に、放射線科医や技師が、検査に対する注意事項や制限について患者に伝える。
・ 依頼医は、検査名を選択するのみで使用薬剤や投与放射能量、検査方法の選択は、ほとんどの場合、核医学検査部門に委ねている。
・ 放射性医薬品については、処方箋医薬品ということになっているが、医師法の第22条四から、診断・治療が決定していない場合は交付しなくても良いことになっていることから、検査に用いる薬品についての処方箋は処方されていない。(CTとかMRI等での造影剤についても同様)
・ 検査の指示があると、医師や技師が検査方法とか使用薬剤を決定する。
・ 検査依頼を受けた後、担当医師か技師が予約を受ける際に目的等について、検査とあっているかを確認する。
・ あっていない場合は、依頼医と相談をして確認をしてからのオーダー確定になる。
・ 使用する放射性医薬品は、施設で採用されている放射性医薬品の中から選択するが、使用量については、添付文書やガイドラインを参考にして、核医学部門で医師が主導で作成した取り決めによって技師が決定する。
・ 発注については、前日に使用医薬品を、メーカーに発注するが、標識済の放射性医薬品については、日本放射線技師会の調査によると、94%くらいの施設で核医学部門が行っている。(薬剤部が管理を行うケースは稀である)
・ 放射性医薬品の荷受は、放射線技師が翌日の朝に、放射線管理区域内で業者から受け取るというのが通常である。
・ 使用医薬品の準備については、当日に開封する段階で、前日オーダーしたものと薬品を確認し、平成18年に薬事法において各施設で作ることが決められている調製の手順書等に従って、ジェネレータからテクネチウムを抽出し自家標識する。
・ 幼児の投与に関しては、準備されている放射能量が適正であるかということを、放射能測定で確認する傾向にある。
・ 会計請求に使用する放射能量は、検定量を採用している場合が多いが、実際に放射能量は時間によって変化するので、ある一定の時刻(例えば正午)での放射能量が会計請求され、放射線管理される量として使われている。
・ 実施の投与量の把握を行政的に指導されているケースが最近は増えている。
・ 投与は、処置室若しくは検査室で行われ、確実に静脈に確保したルートから、静脈注射するのが一般的である。
説明により、本来あるべき検査業務の流れについて、委員全員が共通認識を持った。

③ 今後の調査・検証内容と分析手法について
委員より、今後の調査・検証内容と分析手法について、まず、時間軸でこの問題に関して起こった事実関係、検査件数と内容、関わった人間とその知識レベル、病院の組織、学会の基準等を2次元マトリックスで整理して、「何故、過剰投与に至ったのか」という観点から検証をするという提案があった。
委員会では、8月中旬までに時間軸による整理を終え、次回の委員会で整理したものについて議論し、情報として不足する部分を整理した上で、関係職員や患者及び家族に対するヒアリングの方法、対象者、時期等について検討することとなった。
ヒアリングの時期については、10月に実施する方向で検討することとなった。

④ 患者の体に与える影響の再検証について
患者の体に与える影響の再検証については、投与線量を専門家の協力を得る中で再検証することとなった。
調査する対象について、DMSA検査(テクネチウムという放射性医薬品を含んだ薬剤を注射して、腎臓の形態等を調べる核医学検査)については、核医学技術学会での検証においてほぼ正確な投与線量が推計されているため、それ以外の検査について再検証が必要だという意見があった。
投与線量の再検証の具体的な実施方法については、今後、検討していくこととなった。
身体に与える影響については、実際にわかっている影響は疾患のない人に対する影響であり、原疾患がある患者に対する影響は非常に難しい確認になることから慎重に検討していくこととなった。

(4)次回の開催について
委員の協議により、第3回委員会は、8月25日(日)午後1時(予定)より、当院の第一会議室で開催することとなった。

5 閉会

以上