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RI検査問題に関する調査委員会 会議の概要1(平成25年5月16日)

平成25年5月16日「委員委嘱式及び第1回委員会」会議の概要のPDF版はこちらPDFファイル(212KB)


RI検査問題に関する調査委員会

委員委嘱式及び第1回委員会 会議の概要

 

日  時 平成25年5月16日(木)
午後2時~4時25分
会  場 市立甲府病院 第一会議室

 

出席者
委  員、4名 (1名欠席)
職  員、13名
事務局、5名

〔委員委嘱式〕

1 委嘱状交付

2 副市長あいさつ

〔第1回委員会〕

1 開会及び資料確認

2 委員及び職員紹介

3 委員会の目的等の説明
事務局より、設置要綱に基づき、委員会の目的、所掌事務、会議の公開、守秘義務等について説明し、承認いただいた。

4 委員長の選任
事務局より、設置要綱第5の規定により、委員長は委員の互選により選任する旨を説明し、委員から「医療の質・安全学会から推薦された長尾委員にお願いしたい。」との意見があり、他の委員も同意したため、委員長は長尾委員に決定した。

5 委員長挨拶
〔委員長〕
この事案については、基本的にはもう既にいろいろな調査や情報提供がされている中で、もう一度、第三者の目でこの出来事を振り返り報告書を作成したいが、まずは、正確な知識の把握に努めていきたいと考えている。
その上で、「何故、このようなことが起こったのか」という観点での原因究明と、もし、それらが医学的水準と比較して評価できるのであれば検討したい。
また、何か再発防止のために提言等ができるのであれば加えたい。

6 副委員長の選任
事務局より、設置要綱第5の規定により、副委員長は委員の中から委員長が指名する旨を説明し、長尾委員長が、このような問題の原因究明についての専門家である河野委員を指名し、副委員長は河野委員に決定した。

7 議事
設置要綱第6の規定により、委員長が議長を務める。

(1)事態発覚からの経過とその背景の説明
事務局より、「RI検査問題の検証と医療安全体制の確立への取り組み」に基づき、次の事項を説明した。
この問題の直接的原因として、
・ 核医学検査を行う際に、放射性医薬品の投与量に関して医師の指示がなかったこと
・ 病院としてマニュアルが存在しない状態で放射線技師が投与量を決めていたが、担当の技師長補佐が決定した基準が不適切であったこと
・ その背景として病院の組織体制に問題があったこと
その中で、
・ 薬剤師が取り扱いに関与しておらず、通常のルールである医師の指示、投与者による指示の確認、正確な投与の確認と記事の記載が行なわれていなかったこと
・ 放射線部門のそれぞれのモダリティー(一般撮影、放射線治療、核医学検査、MRI検査等の各部門)における専門性の高まりから他の部門へのチェック体制がなかったこと
・ 上司も核医学検査担当の技師長補佐に一任していたため過剰投与を長年にわたって発見・指摘できなかったこと
・ 放射線部門が人事異動のない閉鎖された職場環境であったため、若い技師が自由に意見を言いにくく、投与量に疑問を感じても上司に相談することができなかったこと
などの問題があったこと。
また、この問題に関して患者様及びご家族の一部が過剰投与内部被曝被害者の会を設立し、その会との2か月に1回開催している意見交換会の議事録については、委員に事前に送付していることを確認した。
また、これまで被害者の会から提出されている要望書や調査事項とその回答内容について説明した。
委員からの質問・意見は特になかった。

(2)事態発覚までの検査手順、マニュアル、職員体制等の説明
事務局より、事態の背景となった核医学検査の流れについて、次のとおり説明した。
・ 検査が必要だと主治医が判断すると、電話で技師に検査の予約をし、核医学検査の種類、使用する放射性医薬品の種類、検査目的を放射線部門システムに入力する。
・ 検査内容や医療被ばくの説明に関してのマニュアルはなく、主治医が検査目的・方法を外来で説明していた。
・ 担当技師は必要な放射性医薬品を電話で発注し、直接運送業者から受け取り保管していた。
・ 投与量に関して医師からの指示はなく、担当技師に一任されていた。
・ ジェネレータ使用時の放射性医薬品は、担当技師が指示された検査予定時間に合わせ抽出するテクネチウム濃度を計算し、抽出後に標識製剤と混合し注射器に準備していたが、キュリメータによる放射線量の測定結果の記録はなく、調整作業の記録もなかった。
・ 放射性医薬品の投与は医師または看護師が患者の氏名、検査名、検査薬品を確認し、シリンジの種類のみを確認していた。
・ 担当技師は、放射性廃棄物を分別して一時保管庫に廃棄し、その後、専用のドラム缶に封入して、処理業者に委託して廃棄していた。
・ 放射性医薬品の残薬は、貯蔵室内の金庫で保管し、十分に減衰したら希釈し排水処理施設に排水していた。
・ 画像は山梨大学からの非常勤医師が読影し、レポートを作成していた。
また、技師長補佐の作成したマニュアルの内容と、これは、病院で承認されたものではなく技師長補佐が独自に作成したもので、これに基づいてローテーション技師を指導していたわけでもなく、このマニュアルの存在を知らない技師もいたことを説明した。
また、組織について、平成22年3月までは中央放射線室は診療支援部の下部組織に位置付けられており、診療放射線技師は放射線科医師の直轄下になく、組織上、放射線科医師は技師を指導する権限もなかったことを説明した。
委員からは、核医学検査の流れを取りまとめた方法やマニュアルについての質問があり、事務局から核医学検査の流れは聞き取りにより取りまとめたこと、マニュアルについては手書き以外の印刷された部分も技師長補佐が作成し、他の人に特に公開しているわけでなく、自分の覚えとして作成されたものであることを説明した。

(3)院内事故調査委員会の検証結果の説明
事務局より、院内事故調査委員会の議事録、資料については事前に送付していることを確認し、4回開催された事故調査委員会の審議内容について次のとおり説明した。
平成23年6月3日に開催された第1回委員会では、
・ 新病院開院後の1999年5月から2011年5月までに10,873件の核医学検査が行われていたこと
・ 15歳以下の小児には145名に対して254件の核医学検査が行われていたこと
・ 放射性医薬品使用記録簿には保険請求量などの数値が記載され、実際の使用量の記録ではなかったこと
・ 投与量の推計方法について
・ 成人の投与量では推奨投与量を大幅に超えているものはないことから、過剰投与の対象は小児に限られること
などの、その時点で判明している状況を確認するとともに今後の対応について、
・ 放射性医薬品使用量がより正確な推計となるよう、再度の推計を指示すること
・ 使用量のデータを専門機関に送り、解析を依頼すること
・ 検査後の診察や血液検査の記録から、過剰投与の対象者の早期の影響を調査すること
などを、決定したこと。
6月10日に開催された第2回委員会では、対象者に早期の影響が無かったことを確認するとともに、再発防止策、放射性医薬品による被曝量、今後の対応について協議を行ったこと。
その後、7月29日に専門機関から身体的影響についての解析結果の報告があり、その内容について核医学の複数の専門家の意見を聞いたこと。
また、画像のカウント数から投与量を推計する実験を再度行い、大きな偏差はないことを確認し、小児患者の検査の必要性についても再確認したこと。
これらを基に、8月17日に開催された第3回委員会では、日本核医学会、放射線医学総合研究所、日本核医学技術学会などの外部の有識者も参加し、外部有識者から回答のあった解析データの評価、核医学検査の全体像を確認し、今後の対応についての協議を行なったこと。
8月26日に開催された第4回委員会でも、外部の有識者も参加し、今回の放射性医薬品の使用量の範囲では短期的な影響は考えられないこと、長期的な影響については非常に低いものであるが無いと断言できないため今後の観察が必要であることを確認したこと。
委員からは、リスクマネージャー会議の開催頻度などについての質問があり、リスクマネージャー会議については、事態発覚前は年2回程度で定期的に行なわれていなかったが、現在は毎月1回開催していることを説明した。

(4)医療安全等検証委員会の放射線部門における検証結果の説明
事務局より、医療安全体制等検証委員会がRI検査問題を契機として、病院の医療安全体制全般を客観的視点から評価・検証し、その結果を反映させることで医療安全に係る体制の再構築と向上を図ることを目的に設置されたこと、委員は、医療安全体制について、医療面、組織体制を含む運営面など様々な視点から検証してもらうために、大学病院で医療安全を担当している医師、医療安全分野で活躍している看護師、マネージメント全般に専門的知識を有する者、弁護士の計4名から構成されていることを説明した。
また、これまで、4回の委員会、8回の調査チームによる現場調査、各部門のマニュアルの検証等の実績を説明し、放射線部門の医療安全体制の検証方法・実施手順などについて説明した。
さらには、委員会からの35項目の指摘事項の内容PDFファイルと、それに対する対応状況PDFファイルについての説明を行った。
委員からは、今後の予定についてなどの質問があり、事務局から7月9日の検査業務、感染対策業務の検証が最後で、それ以降、報告書をまとめて終了することを説明した。

(5)関係学会等における調査報告書の説明
事務局より、次の関係学会等における調査報告書の確認をお願いした。
・ 日本核医学会の声明「放射性医薬品の過剰投与について」:平成23年9月1日
・ この問題に関して日本放射線技師会が行った「放射性同位元素過剰投与に関わる現地調査」の調査報告:平成23年9月13日
・ 日本放射線技師会の「RI投与量全国調査委員会報告書」:平成23年12月26日
・ 日本核医学会と核医学技術学会の 「日本核医学会並びに日本核医学技術学会緊急実態調査と追加調査の報告」:平成24年1月30日
・ この問題に関して、横浜市立大学の雫石講師がまとめた「放射性医薬品過剰投与の再発防止策について」:平成24年3月
・ 日本核医学会の小児核医学検査適正施行のコンセンサスガイドライン第1部の「小児核医学検査の適性投与量」:平成25年3月18日
委員からは、「放射性同位元素過剰投与に関わる現地調査」の調査報告における法的指摘事項等について、病院で検証した経過があるか確認があったが、事務局から検証した経過はない旨を伝えた。

(6)インシデント報告の現状の説明
事務局からインシデント報告の現状について、「平成23年度ヒヤリハット情報・報告」を基づき、特に医師と放射線部門からのインシデント報告を中心に次の事項を説明した。
・ 平成23年度のヒヤリハット合計件数は479件、月平均40件、平成24年度は684件で、月平均57件で、平成23年度より205件増加していること
・ 職種別の報告では、看護職の割合が最も多く393件、77%で、次に多かった職種は、放射線技師で18件、4%で、放射線技師を含め報告が少なかった医師、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士からも報告されるようになってきており、平成24年度は、医師から33件の報告があり18件増えていること。
委員からは、病床・職員数から考えると、インシデント報告数が少ないことの指摘があった。
また、インシデントとヒヤリハットの区別の方法についての質問があったが、事務局からインシデント報告の同義語としてヒヤリハットと定義しており、「間違いがあったが、患者には実施しなかったレベル0」と、「間違いがあったが、患者には変化が生じなかったレベル1」をヒヤリハットとして取り扱っている旨を説明した。

(7)「過剰投与内部被曝被害者の会」からの要望書(平成25年2月2日付け)の説明
事務局より、2月22日付けの「過剰投与内部被曝被害者の会」からの要望書における次の4項目の要望内容と、要望の理由、候補者名簿等について説明した。
①病院関係者からの詳細なヒアリングの実施
② 被害者及び家族からの可能な限りのヒアリングの実施
③ 推薦者名簿記載の候補者からの当委員会への委員の採用
④ 調査結果報告書の公表と公表前の被害者及び家族への説明
委員審議の結果、
①については、ヒアリングの対象、方法については、今後、検討するが、必要があれば実施する。
②については、これまでの説明内容では、どのような説明が患者及び家族になされていたという部分がないので、ヒアリングの対象、方法については、今後、検討するが、是非、実施すべき。
③については、学会推薦でこのメンバーが集まっているので、客観性・中立性という観点からは、今の段階ではこのメンバーで進める。
④については、そのために調査をするということなので説明方法等については、今後検討するが、実施する。
という結論になった。

(8)「過剰投与内部被曝被害者の会」からの要請書(平成25年5月15日付け)の説明
事務局より、5月15日付けの「過剰投与内部被曝被害者の会」からの要請書における「要望事項に留意しながら、徹底的な調査を行ってほしい」という趣旨、要請の理由、要望事項の内容について説明した。
委員に確認していただいた結果、切実な内容なので真摯に受け止めて、対応すべき点は対応していくこととなった。
また、要請書の中の「日本核医学会からの甲府市長に対する第三者調査委員会の設置を求める要望書」が出されている旨の記載があったことから、委員に配布し、日本核医学会と核医学の認定試験を実施している日本医学放射線学会も、当事者というスタンスで第三者委員会の設置を要望する立場であることを確認した。
※要請書の要望事項
第1 過剰投与の原因
1 核医学検査それぞれにおいて放射性医薬品の過剰投与がされたきっかけ・原因・動機
2 核医学検査それぞれにおいて放射性医薬品の過剰投与が長期間継続した原因
3 2011年4月の発覚後も放射性医薬品の過剰投与が継続した原因
第2 被害者への投与量
1 核医学検査それぞれにおいて通常投与していた投与量
2 被害者それぞれに対する推定投与量
3 シリンジ製剤による過剰投与
第3 核医学検査の検査方法
1 核医学検査の調剤の手順
2 核医学検査の実施の指示について
3 患者への説明について
4 放射性医薬品の投与について
5 核医学検査の撮影について
6 使用記録簿の入力者・責任者
7 診療報酬請求について
第4 放射性医薬品の過剰投与による健康被害について

(9)検証内容についての審議と今後の進め方について
委員長の判断により、医療関係者は退席し、委員と事務局で次の事項についての審議・確認を行った。
・ 基本的な責任の所在に関する事項
・ RI検査における技師に対する指導方法に関する事項
・ RI検査問題の原因に関する事項
・ 保険請求に関する事項
・ RI検査を実施する際の病院側から患者への説明に関する事項
・ 病院の医療安全管理体制に関する事項
・ RI検査に関して医師や技師の役割分担、検査体制に関する事項

また、委員ごとに、次の役割を分担し、第2回委員会以降、検証していくこととなった。
・ どのような分析手法が適しているのか、時系列に並べてどのように分析していくかということの検討
・ 患者に与える影響の再検証
・ RI検査に関するコミュニケーションの問題、RI検査全体の流れなどの検証
・ この委員会は過失の有無を判定するものではないが、責任の所在を明確にするための法的根拠についての検証
・ 全体的な医療安全管理体制等についての検証
また、診療報酬請求上の管理監督の問題、組織内に自由な発言を阻害するような要因があったのかという部分について、ヒアリングを実施したいという意見があった。

(10)次回の開催について
委員の協議により、第2回委員会は、7月の開催で日程調整するが、困難な場合は8月に開催することとなった。

9 閉会・院長あいさつ
〔院長〕
当院では、今回、この問題を確認して以来、患者様及びご家族に対して事態の説明と健康診断など、できる限りの対応に努めるとともに、当院における医療安全体制の改善と職員意識の改革について最優先で取り組んできた。
今後も、当委員会の検証の中での指摘事項やご意見を真摯に受け止め、再発防止と万全な医療安全体制の構築に努めていきたい。

以上