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舌下免疫療法

当院ではスギ花粉症やダニアレルギーの方の治療として、舌下免疫療法を行っています。

1.舌下免疫療法とは

舌下免疫療法とは、「アレルゲン免疫療法」のひとつです。アレルギーの原因となるアレルゲンを含む治療薬を投与し、体を徐々にアレルゲンに慣らすことによって症状を和らげる治療法です。

これまで病院に来てアレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が主でしたが、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で服用できるようになりました。

現在、舌下免疫療法の対象となっているアレルゲンは、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎のみです。

症状を和らげる目的の薬物療法とは違い完治の可能性がある治療でもあります。

2.舌下免疫療法の対象となる人

舌下免疫療法の対象はスギ花粉症もしくはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんです。診察、血液検査などを行い診断します。片方だけではなく、両方の症状がある場合にも開始時期をづらせば治療は可能です。

3.舌下免疫療法の流れ

以下のような流れに沿って治療が行われます。

1.初回の診察

問診や血液検査などを行います。
検査の結果を医師が確認し、舌下免疫療法が可能だと判断された場合においてのみ、治療が開始されます。
検査の結果は概ね一週間程度かかります。

2.診察・アレルゲン初回投与

舌下免疫療法を開始することになったら、医師の指導の下で治療薬の初回投与を病院で行います。
投与後30分は病院内で安静に過ごしていただき、体調などに変化がないことを確認し、帰宅していただきます。

3.自宅での服用

初回の治療薬投与に問題がなければ、翌日から自宅での服用を開始します。

4.増量

1週間後に再診していただき、アレルゲンを増量し、病院内で投与します。
初回と同様に30分間の院内での安静が必要です。
その後1週間は自宅での投与となります。

5.再診

増量から1週間後に来院していただき、診察の上問題なければ投与を継続します。

6.定期的な受診

その後は少なくとも月に1回ほど定期的に受診し、副作用などがないか確認しながら治療を進めていきます。

4.開始時期

花粉の飛散時期にはアレルゲンに対する反応が過敏になっていて、開始するのには適していません。花粉の飛んでいない時期に開始します。

具体的な時期については医師と相談して決めていきます。

5.治療期間

舌下免疫療法は、3年以上継続して行うことが推奨されています。

毎日薬を服用する必要があるため、根気強く続けなければなりませんが、舌下免疫療法は治療期間が長いほど効果を発揮できるともいわれています。

続けることでより高い効果が期待できるため、1~2年ほどで効果が感じられないからとやめるのではなく、長く治療を行うのがおすすめです。
場合によっては、長期的な効果のため3年以上継続して治療を行うことがあります。

6. 舌下免疫療法に期待できる効果

  • 症状の緩和、改善
  • 治療薬の減量
  • QOL(生活の質)の改善
  • 根治の可能性

効果は必ずしも治療を始めてすぐに感じられるとは限りません。
初年度で効果を感じられる方もいますが、数か月後や2~3年後など、個人差があります。焦らずに治療を続けることが重要です。また、7~8割の方は症状が改善されるといわれていますが、2~3割の方は効果を感じられないこともあります。

医師と相談しながら治療を進めてください。

7. 舌下免疫療法の副作用

アレルゲンが配合された薬を服用するため、副作用(副反応)としてアレルギー反応が起こってしまうことがあります。
従来行われていた皮下免疫療法に比べると少なく、格段に安全とされています。

主な副作用は以下の通りです。

  • 唇、舌の腫れ
  • 口内炎
  • 口の中の浮腫、かゆみ、不快感
  • のどのかゆみ、刺激感、不快感
  • 耳のかゆみ           など

重大な副作用として、アナフィラキシーショックとよばれる急性の過敏反応を引き起こす可能性があります。
引き起こされる反応は、蕁麻疹や嘔吐などの消化器症状、咳や呼吸困難などの呼吸器症状、意識の混濁などです。
このような症状が現れたときには直ちに医療機関を受診してください。救急車などを要請し、できるだけ早く病院で対処してもらうことが非常に重要です。

8. 治療の適応年齢

以前の治療薬は12歳以上が適応でしたが、2018年に11歳以下でも可能な治療薬が発売となりました。

服用しやすい即溶性錠剤で、子供でも比較的簡単に服用が可能ですが、幼い子供の場合には難しいこともあるため、大体5歳以上くらいから治療できると考えられています。

高齢者の方は治療の適応外ではありませんが、舌下免疫療法による治療効果が出る割合が低くなるといわれています。

9. 治療を受けられない方

スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎であっても、治療を受けられない方もいます。

重症の気管支喘息を持っている方、がんや免疫系の疾患がある方、免疫不全の病気を持っている方、妊娠中の方などは治療の適応外です。

その他にも以下のような方は医師に相談しておくことをお勧めします。

  • アレルゲン免疫療法の治療でアレルギー症状を引き起こしたことがある
  • 気管支喘息がある
  • 授乳中である
  • 重度の心疾患、高血圧がある
  • 他のアレルゲンに対しても反応性が高い

舌下免疫療法はスギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の完治が期待できる唯一の治療法です。
治療期間は長くかかり、毎日薬を服用する必要がありますが、症状が重く、日々の生活にまで大きく影響している方は、試してみる価値はあるといえます。

不快な症状に悩んでいたり、治療を考えている方は、まずは当科を受診し、医師に相談してください。

※薬を販売している鳥居薬品のアレルゲン免疫療法専門サイトがあります。参考にしてみてください。

https://www.torii-alg.jp/